38歳精神科医が腹筋割るログ

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プロバイオティクスと肥満をめぐる2つの論文 ~情報という名の甘い罠~

皆様どうもご機嫌麗しゅう!

モレキレカンでございます。

私はヨーグルトを食べない日はないというくらいに、摂取しています。そんな中でヨーグルトを始めとしたプロバイオティクスが身体に何か+αの良いことをしてくれたりするんだろうかと気になって調べてみたんです。いくつかの論文を読んでみる中でもっと気になることに気が付いて、これは皆さんも陥る可能性のある罠なのではと思い、ご報告させていただくことにしました。論文を読むという時だけではなく、テレビでの情報や専門家と呼ばれる方の話を聞く中で騙されてしまったり、勘違いしてしまったりする時にも役立つ話だと思いますので、是非お付き合いください。

果たして論文を読むなかで誰もが陥りがちな罠とは!?

 

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プロバイオティクスと肥満をめぐる2つの論文

そもそもプロバイオティクスてなに?

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まずはプロバイオティクスとは何なのか?についてです。

probiosis=共に生きる、共生を語源として作られた言葉で「腸内細菌叢を整えることで宿主に良い影響をもたらす微生物」という定義がなされています。有名なもので言うとビフィズス菌や乳酸菌がこれにあたります。そして日本では特定保健用食品制度で認められたいわゆるトクホの商品があります。そして生きて腸内へ届くこともプロバイオティクスの定義に含まれており、死菌でも効果があるという考え方はバイオジェニクスと呼ばれています。

そしてプロバイオティクスの餌になるような糖類はプレバイオティクスと呼ばれます。例えば様々な種類のオリゴ糖マルチトールソルビトールと言った糖アルコールと呼ばれるものの中にも含まれるものがあります。

プロバイオティクス=腸に良い微生物

プレバイオティクス=そのエサ

と単純に捉えてしまって良いでしょう。

そしてプロバイオティクス+プレバイオティクスをシンバイオティクスと呼びます。腸に良いやつとそのエサのセットなのですごい良いものっぽいですよね。

実際に腸内環境を整えることというのは健康に寄与すると思いますし、一定の効果が証明されているのでトクホにも認定されています。今回の記事はプロバイオティクスの効果を否定するものではありません。

 

一つめの論文

 一つめの論文はこちらです。「The Potential Role of Probiotics in Controlling Overweight/Obesity and Associated Metabolic Parameters in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis」簡単に訳すと、成人の過体重や肥満のコントロールとそれに関連する代謝パラメーターに対するプロバイオティクスの潜在的役割についてシステマティックレビューとメタ解析を行いましたということになります。以下に本文のリンクを貼ります。

※システマティックレビュー:個々の研究結果を集めて、専門家などが重み付けをしてそれに基づいて軽重をつけて分析したもの

 メタ分析:個々の研究結果を集めて、重みづけをせずに均質に扱って分析したもの

www.hindawi.com

超要約:2008年1月~2018年7月までに掲載された論文がチェックされ、12のランダム化比較試験、821人が対象になった。結論としてはプロバイオティクスは体重、ウエスト周囲長、体脂肪量を減少させ、総コレステロール、LDLコレステロールインスリン値、インスリン感受性を改善した。

 ※ランダム化比較試験:ある介入以外は同じになるように無作為に分け、なるべくその介入が持つ効果を判定できるようにした試験。今回ではプロバイオティクス投与以外は全て同様になるようプロバイオティクス群と対照群をコンピューターでの乱数により群分けして行う試験。比較的信ぴょう性が高いと考えられている。

 

なんだかプロバイオティクスすげー、明日から絶対摂るぜと思いますよね。これがもしもテレビで放映されればたちまちプロバイオティクス関連商品は品切れが続くでしょう。ただ、今回の記事はこの論文を伝えることが本意ではありません。次の論文の結果も是非読んでください。

 

二つめの論文

二つめの論文はこちらです。「Effects of oral supplementation with probiotics or synbiotics in overweight and obese adults: a systematic review and meta-analyses of randomized trials」簡単に訳すと、肥満の成人にプロバイオティクスもしくはシンバイオティクスを経口摂取させたランダム化試験をメタ解析、システマティックレビューしてみたっていう感じですね。以下にリンクを貼ります。

academic.oup.com

 

超要約:2017年8月初めまでに掲載された全ての言語の論文がチェックされ、19のランダム化試験、1412人が対象になった。結論としてはプロバイオティクスやシンバイオティクスは腹囲には小さいながらも効果があったが、体重やBMIには効果が見られなかった。しかしながらエビデンスレベルの低い(再現性や信憑性に乏しい)ものであり更なる研究を要する。

という結果だったようです。

 一つめの論文の結果と二つめの論文の結果を比べるとほぼ真逆です。一つめの論文などは医療関係者でも論文を読みなれないと、821人が対象のシステマティックレビューで結果が出てると言われて、鵜呑みにしてしまいがちな結果です。

 

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これは一体どういうことなんでしょうか。どちらかの論文が間違っているのでしょうか。決してそうではなく、どちらの研究も実際に行われ、出てきた結果をそのまま報告してくれています。そしてひとつめの論文の要約ですが、省略した部分があります。それはどのくらいの変化があったかという数字の部分です。体重に関して減ったと書いていますが、その差は‐0.55㎏で、BMIに関しては‐0.30㎏㎡です。この数字を見るといかがでしょうか。あとはどの程度の期間でというところも気になりますが、私が読んだ限りでは具体的な期間については確認できませんでした。4週間での数値か、8週間での数値か、12週間での値かというところでも全く違ってきますよね。仮に8週間程度だとすると2か月で0.55㎏の差をどう捉えるかということになります。

ちなみに研究結果としてこの0.55㎏が誤差か否かについてはp検定という方法を用います。p検定では差があることが確からしいと判定されています。そのため0.55㎏が誤差でないというのは統計的には確からしく、それは有意な差があると表現されます。

研究結果として良い作用があったと言うのは間違っていないんですが、それが生活に取り入れて目に見える結果に繋がるかというのはまた別の問題であるわけです。

なので、一見真逆の結果に見えるような二つの論文ですが、真逆というよりはプロバイオティクスが目に見える形で直接に肥満を改善するということはなさそうだという結論を導き出すことが出来る結果であるということです。

 

まとめ

要するに何が言いたかったかと言いますと、「論文結果は効果があったというような単純な言い切りで結論付けるようなものではない」ということです。

どの程度効果があったのか、生活に取り入れてどのくらい効果がありそうなのかそう言ったところまで見ていくとさらに情報を取捨選択する目が養えるのではないかと感じた論文初心者の話でした。

 

今回はプロバイオティクスが肥満に対して効果があるか否かという部分に関しての検証のお話でしたので、腸内環境を整えてくれる良い作用というのは明らかにあると思いますので、その部分を否定するものではないということは重ねてお伝えしておきます。

最近ではgoogle翻訳様の精度も上がってきてますので、英語に自信がないなという人も是非一度論文という一次情報に触れてみると面白いですよ!